専門家コラム第2回 学童・思春期に大切な栄養素 ~ カルシウムについて~
カルシウムとは?
カルシウムは、体重の1~2%(体重50kgの成人で約1kg)含まれており、生体内に最も多く存在するミネラルです。その99%はリン酸と結合したリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)として骨や歯に存在しています。また、カルシウムは骨や歯をつくるだけでなく、筋肉の収縮や神経を安定させる作用もあります。
成長期に最大骨量を増やしておこう!
第1回のコラムで、思春期には身体発育が急加速で起こる「成長スパート」が見られ、骨や筋肉を作るために必要な栄養をしっかり摂ることが大切であることをお伝えしました。
骨量は成長期に増加し、20歳頃に最大骨量に達し、その後、加齢に伴い減少していきます。特に女性においては、閉経後、骨量が減少しやすくなります。生涯を通じての骨粗鬆症の予防は、獲得する最大骨量を大きくすることと、骨量減少を最小限に留めることが大切です。
骨って何からできているの?
骨は細胞成分(骨芽細胞・骨細胞・破骨細胞)と骨基質からなります。骨基質はコラーゲンからなる有機成分(骨基質タンパク)と、カルシウムやリン(ハイドロキシアパタイト)からなる無機成分、および細胞外水分でできています。つまり骨を鉄筋コンクリートの建築物に例えると、コラーゲン(タンパク質)は鉄筋、ハイドロキシアパタイトはセメントに相当します。1)
骨はつくりかえられています!
骨の成長にはモデリングとリモデリングがあります。モデリングは成長期に起こり骨格は大きくなりますが、成長が停止したあとも、絶えず古い骨から新しい骨に入れ替わっています。既存の骨が吸収され、その部位に新しい骨が形成され元の形状が維持されることをリモデリングといいます。骨リモデリングは、「骨をこわす細胞(破骨細胞」と「骨をつくる細胞(骨芽細胞)」が働きます。まず破骨細胞が古い骨をこわし、次に、骨芽細胞がコラーゲンを生成し、カルシウムが付着して新しい骨がつくられ骨は生まれ変わります。2)
つまり、骨の成長には、カルシウムとタンパク質(コラーゲン)が欠かせません。
カルシウム不足を防ぐ食生活のポイント
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」3)では、1日当たりのカルシウムの推奨量を、以下のように設定しています。
・成人男性:750mg(18~29歳は800mg)
・成人女性:650mg(75歳以上は600mg)
・成長期(12~14歳):男性1,000mg・女性800mg
しかし、令和6年 国民健康・栄養調査結果(栄養素等摂取量)4)では、7~14歳のカルシウム摂取量は
・男性:633mg/日
・女性:588mg/日 と、不足しているのが現状です。
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』5)では1日700〜800㎎のカルシウムの摂取を勧めていますので、日々の食生活の中で積極的にカルシウムをとるようにしましょう。また、骨の成長の為にはカルシウムだけでなく、ビタミンDなど、ほかの栄養素にも気を配らなければなりません。
1)摂取すべき栄養素
*カルシウムは、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品、野菜類や海藻、骨ごと食べられる小魚、などに多く含まれます。なかでも、牛乳や乳製品は、カルシウムの吸収率が高く、1回の摂取量も多いので、効率よくカルシウムがとれます。
*ビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収率を高めます。魚を食べたり、適度に太陽光に当たったりすることでビタミンDを良好に保てます。
*ビタミンKは、骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質を活性化し、カルシウムの骨への取り込みと骨形成を促進します。
また、カルシウムが尿中に排泄されるのを抑え、骨の破壊を防ぎます。納豆や緑黄色野菜、海藻などに多く含まれています。
*ビタミンCは、骨基質の有機成分であるコラーゲンの合成に必須であり、骨芽細胞の分化や石灰化を促進することで骨密度を維持・向上させます。
2)過度の摂取に注意すべき栄養素
リンは、肉類やインスタント食品、加工食品にはリンが多く含まれ、リンを過剰に摂取するとカルシウムの尿中排泄が増え、吸収が阻害されます。同じく、ナトリウム・カフェイン・アルコールもカルシウム吸収を阻害します。

まとめ
*成長期の骨づくりのためにカルシウムとタンパク質を積極的に摂ろう!
*ビタミンD・ビタミンK・ビタミンCも骨形成に大切!
<参考>
1)病気がみえる11 運動器・整形外科/医療情報科学研究所/メディックメディア
2)解剖生理学 人体の構造と機能(第3版)編集/志村二三男、他 /羊土社
3)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2025年版)『日本人の食事摂取基準』策定検討会報告書」p.243~285
4)令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要_栄養素・食品群別摂取量に関する状況/厚生労働省
5)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年
【平野直美先生 プロフィール】
神戸女子短期大学食物栄養学科教授・医学博士(Ph.D.)。専門分野は「人体の構造と機能」、「健康科学」およびその関連分野。well-beingおよびサクセスフルエイジングを目指すための各ライフステージに必要な栄養、運動、生活習慣および適切な健康教育、食育をテーマに教育、研究に従事している。令和4年度・「兵庫県 健康づくり等にかかる知事表彰」、令和7年度・「厚生労働大臣表彰(栄養関係功労者)」を受賞。


